朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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カテゴリ:詩集 夢と悪夢と( 15 )

Archive  夢と悪夢と より 「砂漠の塔」


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   「砂漠の塔」


 柔らかい砂にうずもれるように

 ガラスの巻き貝が突き刺さっている

 殻の中に造られた窓のある書斎で
 
 わたしは今日もまたいつものようにひとり

 オレンジ色のランプに眼をしばたかせながら

 無限までの距離を測り直すのだけど

 惑星間通信の電波ジャックにきょうもじゃまされて

 星屑の数ほどにはカササギを見つけられなかった

 白い翼はポキンと折れるホワイトチョコでも飴でもなくて

 生きることの苦さを知った人だけの夢に降るやすらぎ

 だから飛ぶ夢は今日も甘く恋のようにあなたをくるんで

 風のように微粒子をダンスの罠に誘うの



 今日も窓を開けて空をひとり眺めて暮らすわ

 淋しさよりも青い砂漠のガラスの塔では

 トランジスタの落としていった涙が結晶に変わる



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 石盤に刻まれた言葉はこう語っていた

 「眠りは、小さな死である。

  それは疲れを忘れさせる。

  忘却は、大きな死である。

  それは不幸を忘れさせる」



 すべて忘れてしあわせに生きるか

 すべて抱えてかなしみに生きるか

 選ぶことはわたしにはできない

 ただ砂漠の嵐だけが知っている

 バン・アレン帯のローレライの歌のように
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____________
   *今回も画像はこちらよりいただきました http://www12.ocn.ne.jp/~eternal/

    なお、この作品は10年以上前の作品です。
    今の私の作品より、若書きの生硬さがある気はしますが、今の気分に
    ぴたりと当てはまる心の風景なので取り出してみました。
    このときは、究極の選択という言葉が流行っていたりして、それを
    詩的イメージに表現を試みたときに、心の内に降って来た作品でした。
 
    +*+*+*

      すべて忘れてしあわせに生きるか

      すべて抱えてかなしみに生きるか

      選ぶことはわたしにはできない

    +*+*+*

    あの当時の私には、こういう究極の選択を突きつけられるような
    運命の岐路に意味ものほんとうの意味がまだわからずにいた気が
    します。わからないなりに思考の中でそんな情況を想像し表現して
    みたのでした。
    ただ、この作品を発表したとき何人かの人生の先輩たちが「まさに
    そうだね。選択と言うのはそういうことだね」とおっしゃっていた
    のを記憶しています。
    そしてその後、幾度かそういう選択を迫られるシーンが私の人生の
    途上にもありました。
    だから、ある意味この作品は予言詩といってもよいのかもしれま
    せん。
    固執せずに、忘れることのほうがしあわせな場合もあるし、抱え
    つづけることがただ悲しくて苦しくても逃れられない場合もある。
    どちらかを選択できる場合はまだ幸運な場合で、運命によって
    抱え続けるのか手放すのか選ぶことさえ出来ない場合だってある。

    ただ、現在の私は…今回の私といってもいい。今回の私の選択は、
    すべてを抱えて悲しみに生きるしかない。忘れることは絶対に
    できない。あり得ない。
    …そういう選択をしました。
    抱え続けることがたとえ悲しみでも、手放すことはできない。
    悲しみの中にこそ喜びがある場合だってある。失わず悲しみに
    耐えてでも持ち続ける価値のあるものに出会えたとも言えるのかも。
    人生の奥深さを知ったと言えるかもしれないし、それだけの存在に
    出会えたと言えるかも。

    明日はこの「砂漠の塔」を今の私の言葉で書いてみようと思います。
    現在の私のスタイルで表現したら、この”究極の選択”どんな作品
    になるか試してみようと思います。


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by forest_poem | 2009-03-15 22:43 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 夢と悪夢と より「大地の鍵」





   「大地の鍵」




 鍵を持っているのはあなた

 お願いその歌を歌うのをやめて

 そして大地にその銀の鍵を突き立てて

 そうすれば何もかも終わるの



 そして新しい朝が始まる

 こんこんと湧きだす泉で

 いっしょに顔を洗いましょう

 いっしょに手のひらにすくって飲み干しましょう



 木綿のシャツがびしょびしょに濡れたら

 脱ぎ捨てればいいわ

 ここには私と

 あなたしか居ないのだから




 鍵を持っているのはあなた

 お願いその歌を口ずさむのをやめて

 そして鍵穴にその銀の鍵を差し込んで

 そうすれば何もかも終わるの



 そして新しい朝が始まる

 こんこんと湧きだす泉で

 いっしょに身体を浸しましょう



 いっしょに手と足を延ばしてきれいに洗い上げましょう

 濡れたからだと髪を乾かすのは

 風にまかせていればいいわ



 ここには私と

 あなたしか居ないのだから




 こんこんと湧きだす泉に

 いっしょに心を委ねましょう



 いっしょに手と手を繋いだまま 

 ただ 空だけをながめましょう
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by forest_poem | 2007-10-10 01:54 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 夢と悪夢と より「私信」




   「私信」



 朝の白い砂浜で、紅い花びら拾ったら

 それは、あなたからの手紙

 「今宵、北からの使者が、あなたの明日を開くでしょう」

 「それが、君を自由へとみちびく」



 深い森のけものみち、青い羽根を拾ったら

 それは、わたしからの手紙

 「自分で自分を縛るより、ときには嘘もつきましょう」

 「それが、あなたを未来へと解き放つ」



 私信は風に乗る、野を越え、海を渡る

 逢いたいけど逢えない、 今はそれでいい

 逢えないけど逢いたい、 今はこのままで

 思い合っていられる、今はそれだけで
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by forest_poem | 2007-10-05 11:52 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「オアシスには今夜も蒼い月が昇るのだろうか」 

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                               詩・画 朋田菜花


  「オアシスには今夜も蒼い月が昇るのだろうか」 




 書きかけの短編小説が上手く走らなくて

 なにも新しいことの始まらないまま

 ことしも美しい季節をやり過ごそうとしていたけれど

 Oasis is so cool,the moon is so blue


 
 あなたの瞳に導かれて私はたちどまった

 今日は私の誕生日

 たった1日の出来事でも私の運命は変わる

 蒼い月は今夜も昇るのね



 もしあなたが私の地球からいなくなったら

 私はどんな貌をして明日から生きるのだろうか

 そう思いながらずっと朝5時の月を眺めていた

 Oasis is so cool,the moon is so blue



 庭に咲く菫たちの色をインクのように吸い上げて

 月はあたしの中の冷えた野性を呼び醒ます

 染められた指先まで血の色まで同じ青い色に変えて  
 


 ひとときの夢に撞かれたのは戯れではなく

 まだ見ぬ伝説があたしを捉えて離さないから

 遠い地平線に向けて走り続けるの 

 Oasis is so cool,the moon is so blue



 蒼い月の庭歩き回る私は半病人に見えるかしら

 それでも構わない少し頭を冷やしたいの

 月の光の下で見ると花々は全然違う色に見えた

 そう、まるで海の底の景色みたい



 あなたにも見えるでしょう

 水面に映る幾千幾億の星

 砂丘に浮かぶ金色の月

 何度でも、あなたの名を呼ぶわ

 名前を呼ぶたびに私は冷たく冴えていくの

 Oasis is so cool,the moon is so blue



 何度でも、あなたの名を呼ぶわ

 名前を呼ぶたびに私の中の熱い体温が甦るの

 Oasis is so cool,the moon is so blue



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by forest_poem | 2006-11-25 02:26 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「月と蜜柑」


「月と蜜柑」


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どうしても叶えたい願いがあるなら

月の夜の公園に

だれにも見られずに蜜柑を一つ

こっそり持って来てごらん



時は十五夜、午前〇時

傷一つないぴかぴかのまるくてちいさくて黄色い蜜柑を

公園のぴたりと中央にそっと置く

誰に見られてもいけない

そう、たとえ隣の猫一匹にさえね



蜜柑を置いたら空に向かって願い事を三回唱え

八十八秒以内に姿を消すこと



お月様曰く

「おっと、私が蜜柑を食べるところなど

決して見てはいけないよ」

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by forest_poem | 2006-11-06 00:38 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「薔薇の花びらのねむり」





「薔薇の花びらのねむり」






ねむれ

瞳とじて

ねむれ幼き子の綿雲抱くかのような軽ろき花びら

ゆうぐれのうすくれないの空に桐木立の葉ずれさやけく

ねむれ

あまき寝息たてて

ゆうなぎの水平線に光る星ひとつ漁り火の右舷のランプのごとく

ゆうらりゆれて

ねむれ

わが腕に

花びらのごとく匂やかにまるく

われもまどろまん

明日に紡ぐひとひらのことのは

夢のごとくあたためながら

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by forest_poem | 2006-10-27 04:28 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「ムーンライト セレナーデ」






「ムーンライト セレナーデ」




月の光浴びたあなたの瞳 黒く澄んで

その奥には星屑が見えた

抱き寄せられた暖かい腕の中

もしかするとこれは夢 いいえこれは小さな魔法



あなたには私しか見えなくて

私にはあなたしか見えなくて



ふたりを引き離すすべての運命の流れより

ひかれ合うその気持ち 強く輝くから

未知の水先へと船を漕ぎ出していくの





その胸にそっと耳を寄せれば 熱く打つ鼓動

今はあなたしか見えない

やさしい口づけまるでいたずらな風のよう

もしかするとこれは夢 いいえこれは消えない魔法



あなたには私だけが見えていて

私にはあなただけが見えていて



ふたりを引き離すすべての運命の流れより

求め合うその気持ち 月の光にゆらめいて

微熱に満ちた世界のなか朝までさまようの

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by forest_poem | 2006-10-26 23:57 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「宇宙の果ての酒場の片隅で」




「宇宙の果ての酒場の片隅で」







時を無くした止まり木は

青い宇宙を漂って

いずれ私たちは

すべてを失うためだけに生きているのだから

今日もこのクラインの壺から

とめどなく湧きだす無限の水を

碧いグラスにすくいとる


明日を失くした恋人たちが

月の砂漠で巡り会い

いつか二人は

すべてを手に入れる夢を語らいながら

今日もこのカウンターで

とめどなくあふれる幻想を

青いインクで写しとる

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by forest_poem | 2006-10-26 03:54 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「Moonlight Caravan Night」





「Moonlight Caravan Night」






今夜砂丘にのぼれば

蒼い月に手が届くね

北の七つ星に

砂の舟を漕ぎ出して

夜光の盃に

美酒を満たして



美しいキャラバンの夜市を

とりどりに彩る異国の織物も

宝石のような果物も

私は少しも欲しくはないの



欲しいのは未知なる音の調べと

まだ誰も見ぬ伝説



それをあなたがくれるなら

私のどんなものと引き替えてもいい



行こう、ともに手をとって

果てしない伝説を巡る旅

捜そう、心ひとつに

失われた人類の旅路の糸をたぐって

砂に埋もれた碑文の謎を 今は月だけが知っている

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by forest_poem | 2006-10-25 03:50 | 詩集 夢と悪夢と

Archive 詩集 夢と悪夢と より 「あなたの愛は私の夢より美しい」




「あなたの愛は私の夢より美しい」






貴方が見ている現在(いま)を

私にも届けて

まだ見ぬその景色を



もうこれ以上 はばたき続けるには長い旅をしすぎたわ

美しい永遠はきっと時限Switch付きの心地よい悪夢

二人は居心地のいいその場所で眠り

暖かいその場所で語らい

新しい朝へと旅立つTeleterminalの多重迷路

でも私は、

どんなにRealな夢を描き続けても

貴方と同じAddressに立つことはない

永遠の飛翔を課せられた 時を失くした白い翼



それでもなお

貴方が時空を越えて孤独を砕き

惑星を包む炎になるというのなら

そう 確かに貴方の愛は、私の夢より美しい



今、水平線にJupiterが昇った

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by forest_poem | 2006-10-25 03:46 | 詩集 夢と悪夢と
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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