朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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カテゴリ:詩集 森のささやき( 5 )

Archive 詩集 森のささやきより 「西の七ツ森」




「西の七ツ森」





【西の七ツ森】っていうのが、この森を抜けてさらにあの方向にある

どんな森かっていうとね‥


一つ目の森は「昨日のない森」

あなたは過去を忘れて少し浮かれて歩く。



二つ目の森は「明日のない森」

あなたは何のために進むのか途方に暮れながら歩く。



三つ目の森は「光のない森」

あなたは暗い闇の中をおびえながら手探りで歩く。



四つ目の森は「音のない森」

あなたは静寂の中で孤独に震えながら歩く。



五つ目の森は「触覚のない森」

あなたは何処を歩いても手応えの無さに空しく歩く。



六つ目の森は「名前のない森」

あなたはすべての物の名前を忘れ戸惑いながら歩く。



七つ目の森は「方角のない森」

あなたはどっちを向いてもぐるぐるまたもとの場所に戻りながらさまよい歩く。



また一人、「西の七ツ森」に旅人が迷い込んだ。

嘘を付いた人。

その場しのぎのきれい事を言った人。

そんな人は必ず七番目の森で螺旋の罠にはまる。

蟻地獄のようにくるくる・くるくる・くるくる・回る・回る。

「西の七ツ森」の森番は、簡単なことでは偽善と欺瞞に満ちた旅人を許さない。



お腹が空いても、くるくる・くるくる。

のどが渇いても、くるくる・くるくる。

月が昇っても、くるくる・くるくる。

月が沈んでも、くるくる・くるくる。

太陽が昇っても、くるくる・くるくる。

太陽が沈んでも、くるくる・くるくる。



でもね、でもね、七回深呼吸をしてから見上げてごらん。

空に北の七つ星が輝いている。

そしてそこから北の一つ星が白く燦然と導き出される。

ほおら、どっちに帰ればいいかもうわかったでしょ?

心の中でそっと三回、唱えてごらん。

「ごめんなさい、もうしません。大事なあなたを裏切りません」


         ◇◇◇


キンポウゲとスズランと露草の揺れる、

広い野原に君は一人。

白い子ギツネが物影から覗いてる、

と、思ったら

昇ってきたばかりの十六夜の月だったね。

おやおや、どっちを向いてもどこにも森なんてない。

四角く切り取られた空き地の中にぽつり。

すぐそこに広がっているのは懐かしい町の明かり。

コトコトン・コトコトン。

と列車の走る音。

そして、

カン・カン・カン・カン‥‥‥

聞こえてきたのは、

いつも通るあの近所の踏切の音。

見上げるとさっきから同じ、

北の七つ星、銀の柄杓星‥‥君のお気に入りの北斗七星が、

じっと君のこと、見ているよ。

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by forest_poem | 2006-10-29 04:52 | 詩集 森のささやき

Archive 詩集 森のささやき 「静寂」



「静 寂」



音のない世界で

あなたの指先がわたしの指にそっと触れて
 
ひとりではないと教えてくれた

見えるものだけを信じるのも

もう今日で終わりにしよう


 
光の射さない部屋で
 
冷たい鏡に額をつけて

映る姿をみつめる
 
視線を返しているのはあなた

それともわたし

そんなとき空間に潜んでいる詩聖(image)が
 
冷たい爪の先に燐のように降りてきて

銀の鈴のように鳴り響く
 
だのにその音さえやはり聞こえない



ただ
 
冷たい
 
澄んだ感触が

いま
 
冴えた鈴の音が鳴っていると告げる

誰にも届くことのない

遠い鈴の音



音のない世界で

あなたの指先がわたしの頬にそっと触れて

決して

ひとりではないよと

一粒の涙を

シャボン玉のように

風の中に飛ばした



それがはじけて消えた音も
 
やはり
 
聞こえなかった



でも
 
耳を澄ましている

もう
 
しばらく
 
こうして

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by forest_poem | 2006-10-07 00:02 | 詩集 森のささやき

Archive 森のささやき「心象ファイル vol.1~3」




 「心象ファイル vol.1」



 あさやけの薄紅のうすえのぐ

 水色のキャンバスに

 あぶりだしのように描いてとどけたい手紙

 待っているうちに足が木の根に変わりました

 髪が木の葉に変わりました



 そっと抱きしめてくちづけして

 涙は森の雫

 ため息は木々を抜ける風



 愛してくれるなら

 これからはあなたを守る森として生きていく

 ひっそりとひんやりとただここにいる







 「心象ファイル vol.2」



 朝焼けいろの絹のカーテンを開けて

 少年は花咲く園にやってくる

 この不可思議な庭園には蜂蜜の貯めてある池がある

 咲く花は白い薔薇、薄紅の山茶花、朱鷺色の椿

 そして小高い丘には時を忘れた木苺が宝石のように輝く


 
 少年は、白い薔薇にも山茶花にも椿にも目もくれず

 木苺だけを摘み帰る

 そして蜂蜜の池に一瓶の濃度の高い糖蜜を注ぎ入れ

 蜂蜜を一瓶汲んで立ち去っていく



 糖蜜が注ぎこまれることで

 蜂蜜が薄まってしまわないか

 などどいうことを案じる必要はおそらく少しもない

 この庭園の標準時はいつも正午なのだから



 ひっそり

 薔薇の花びらを噛んでみる

 林檎のようにせつなく

 追憶のように甘いかおりに包まれ

 蜜色の池のほとりに立つ



 空は思い出の絵の具のように流れている







 「心象ファイル vol.3」



 なにもかも見失いそうな空

 誰の声ももう聞こえない私の耳

 涙が頬を伝う風の中



 そんなとき

 かならず森からの風が吹いてくる

 ひとりではないよ

 君だけひとりぼっちにはしないよ

 いっしょに生きていこう

 明日の命は

 君のほほえみのなかにある
 


 私の耳は

 森の深奥から響く聖樹のうたにつつまれ

 心は羽になる



 瞳には

 もう

 青空しか

 うつっていない
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by forest_poem | 2006-09-19 12:57 | 詩集 森のささやき

Archive 森のささやき「僕たちの王国」


     「僕たちの王国」
 

森の中の僕たちの

森の中の四畳半の王国へ帰ろう




手をつないで

電気・ガス・水道・電話・ネットワーク
  
何か忘れてない?



キスより熱く頭脳よりクールに
 
冷暖房不完備の小説を生き抜こう

心のおもむくままに



手をつないで眠ろう
  
今夜も
 
ずっと・・・



森の中の僕たちの
  
森の中の四畳半の王国で
 
今夜も星を数えて夜をすごそう


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by forest_poem | 2006-09-13 06:11 | 詩集 森のささやき

Archive 森のささやき「一枚目の頁にこそいつも真実が in 2006」

    「一枚目の頁にこそいつも真実が in 2006」


緑の樹々の木漏れ日に

葉ずれのさやけさに

眠たくなるような午後

あなたは翡翠色の薄衣を着て

僕の想い出の中にたたずむ



そっとあなたの名を呼ぶ

そして、いつものように手紙を何枚かしたためる

だが、その手紙はあなたに届くことはない



あなたの名は「追想」

あなたの名は「憧憬」

あなたの名は「思い出の丘の樟の木」



とめどなくあふれてくる言葉

いつも一枚目のページのなかにこそ真実が



その言葉を今日から僕は「夢」と名づけることにした

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by forest_poem | 2006-09-12 14:46 | 詩集 森のささやき
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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