朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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即興詩 「秋の海岸で世界は時を止め」


   「秋の海岸で世界は時を止め」



 秋の日射しの中で
 眠ってしまってはいけない
 風の中にひそむ
 氷の妖精があなたを連れ去ってしまうから

 そのバルコニーでは
 恋人たちがさっきから静かに見つめ合っていた
 テラスの眼下には人気もまばらな秋の荒磯が広がっており
 青い波しぶきが押し寄せては、また返すのだが
 恋人たちは無言で互いの瞳の中を見つめ合っていた

 秋の一日はやがて終わろうとしており
 水平線を紅の光が染め上げていた
 明るい流れ星が
 金星の肩先をかすめながら海に落ちて行くのを
 恋人たちは気づいたのだろうか
 まるで世界の終わりのように思いつめた表情で
 時を無くしたかのように


 ***

 どうしてあなたの瞳の中に映る私の顔は
 こんなに寂しそうで泣きべそなのかしら
 いえ どうして私の瞳に映るあなたの顔も
 こんなに寂しそうに 所在無さげなのかしら

 なんだか見つめていると 胸が苦しくなり
 そして 胸が熱くなる
 
 だけどそよ風が二人のほほをくすぐるから
 小鳥たちや海鳥たちがのどかに戯れている
 こんなのどかな午後だから
 ふと自分の姿を見つめながら くすっと笑ってみた
 
 そしたら あなたの瞳の中の私も くすりと笑い
 そして あなたも頬をくずして 笑った

 世界は決して終わったりはしないわ
 終わってまた始まるの
 今日たとえばもし ここで背を向けてそれぞれ歩き始め
 世界が終わっても
 また再び始まるのよ
 あなたと過ごすたび 
 私は何度も世界を獲得するの
 ともに生きる一瞬の時の中に 
 何度でも何度でも永遠を生きることが出来るの 私たちは
 今日の夕暮れを忘れない

 ***

 女はなぜ夕焼けが見えなくなったのだろうと思った
 それは 男の胸に抱きしめられたからだった

 男はなぜ雨が降っているのだろうと思った
 それは 睫毛を淡い涙が濡らしたからだった 

 
 秋の日射しの中で眠ってはいけない
 秋の夕暮れの中でさまよってはいけない
 あたたかい炎はあなたの内側にしか無いのだから
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by forest_poem | 2007-11-08 05:28 | 詩 未分類
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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