朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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即興長詩 「人になつかない一匹の青い魚」




  「人になつかない一匹の青い魚」



私はおまえに毎日話しかけ

毎日餌を与え

時折、水槽をていねいに洗い

水を換え、水草を入れ替えてやる



おまえは私が水面に向かって話しかけると

時々は飛び跳ねて餌をねだり

時々は口を開けて私の真似をするが

寒い日は水底に身を横たえたままだね



広辞苑一冊分ぐらいの小さな水槽だけが

おまえの棲家だから

私のあとをついてまわりたくても

できないことぐらいわかっているさ



だからせめて

会えたときぐらい挨拶を交わさないかい

金魚やメダカにはそんな芸当できないことぐらい知ってるさ

おまいさんだから言うんだよ



3日もほとんど家を空けて出掛けていてごめんよ

毎日連れて歩けばよかったのかい

そばにずっと居ることだけが愛情なのかい

おまえがもしそう思っているならそれはお門(かど)違いさ



毎日お前がどんな風に生きていたか

短い交信のひとときの中で見つめている

そこから一日元気だったのか

それとも少し具合が悪いのか

今何が必要なのか

私にできることはなにか

するべきことを探している

お前と私自身のために 

お前を生み出したこの世界と世界自身のために



確かにエラは動きときどき尾鰭も動いているから

生きていることだけはわかるけれど

お前がここに確かに生きていると

ほかの誰でもない私にもう一度示してくれないかい



太陽の陽射しが少し少なくなってきている

だから私は少しだけ魂のボリュームをあげたいだけさ

太陽の国で生まれたお前のために

青空よりも海よりも 青く輝くお前自身のために



仕方ない

またオカリナでも吹くかい

悪いけど、オカリナとマンドリンもカリンバも

同時には演奏できないよ

私は手が二本しかないし

この小さな部屋には、私とお前しかいないのだからね

そして、お前は今も昔も小さな無愛想な青い魚で

決して来世に「青い鳥」になって私に巡り会ったりなど

しはしないのさ

今生きている この瞬間 この時だけがすべてで

その先どうなるかは 今このときをどう生きるかで決まるのさ

だから私は来世のことなどおまえに約束しない 

できるはずがない



太陽の陽射しが少し少なくなってきている

だから私は少しだけ魂のボリュームをあげたいだけさ

太陽の国で生まれた私のために

永遠よりも未来よりも 青く輝くこの瞬間(とき)を

生き抜くために

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by forest_poem | 2006-11-09 08:46 | 未完詩集 瑠璃…
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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