朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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Archive 詩集 森のささやきより 「西の七ツ森」




「西の七ツ森」





【西の七ツ森】っていうのが、この森を抜けてさらにあの方向にある

どんな森かっていうとね‥


一つ目の森は「昨日のない森」

あなたは過去を忘れて少し浮かれて歩く。



二つ目の森は「明日のない森」

あなたは何のために進むのか途方に暮れながら歩く。



三つ目の森は「光のない森」

あなたは暗い闇の中をおびえながら手探りで歩く。



四つ目の森は「音のない森」

あなたは静寂の中で孤独に震えながら歩く。



五つ目の森は「触覚のない森」

あなたは何処を歩いても手応えの無さに空しく歩く。



六つ目の森は「名前のない森」

あなたはすべての物の名前を忘れ戸惑いながら歩く。



七つ目の森は「方角のない森」

あなたはどっちを向いてもぐるぐるまたもとの場所に戻りながらさまよい歩く。



また一人、「西の七ツ森」に旅人が迷い込んだ。

嘘を付いた人。

その場しのぎのきれい事を言った人。

そんな人は必ず七番目の森で螺旋の罠にはまる。

蟻地獄のようにくるくる・くるくる・くるくる・回る・回る。

「西の七ツ森」の森番は、簡単なことでは偽善と欺瞞に満ちた旅人を許さない。



お腹が空いても、くるくる・くるくる。

のどが渇いても、くるくる・くるくる。

月が昇っても、くるくる・くるくる。

月が沈んでも、くるくる・くるくる。

太陽が昇っても、くるくる・くるくる。

太陽が沈んでも、くるくる・くるくる。



でもね、でもね、七回深呼吸をしてから見上げてごらん。

空に北の七つ星が輝いている。

そしてそこから北の一つ星が白く燦然と導き出される。

ほおら、どっちに帰ればいいかもうわかったでしょ?

心の中でそっと三回、唱えてごらん。

「ごめんなさい、もうしません。大事なあなたを裏切りません」


         ◇◇◇


キンポウゲとスズランと露草の揺れる、

広い野原に君は一人。

白い子ギツネが物影から覗いてる、

と、思ったら

昇ってきたばかりの十六夜の月だったね。

おやおや、どっちを向いてもどこにも森なんてない。

四角く切り取られた空き地の中にぽつり。

すぐそこに広がっているのは懐かしい町の明かり。

コトコトン・コトコトン。

と列車の走る音。

そして、

カン・カン・カン・カン‥‥‥

聞こえてきたのは、

いつも通るあの近所の踏切の音。

見上げるとさっきから同じ、

北の七つ星、銀の柄杓星‥‥君のお気に入りの北斗七星が、

じっと君のこと、見ているよ。

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by forest_poem | 2006-10-29 04:52 | 詩集 森のささやき
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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