朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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即興長詩 未分類 「私の森はあなたの宇宙」





  
「私の森はあなたの宇宙」



 両腕を翼のようにひろげて

 「この腕の中が小さな宇宙よ」ってつぶやいてみる

 あなたを抱きしめあなたを宇宙の王者にしてあげる



 あなたの鼓動が宇宙の脈動

 あなたの体温が宇宙の温度



 私の手のひらはあなたの背中の傷の場所に触れ

 静かな涙が宇宙の内側を流れ始める



 私とて全き宇宙などではなく

 いつかあなたに話したように

 左足首には長く縫われた手術痕があるの



 いつか話してくれた海に近い森へ

 私を連れて行って

 猫たちが死に場所を求めてさまよいたどり着く森へ

 いつか話してくれた岩の多い海へ

 私を連れて行って

 海蛇たちがゆるやかに波をぬって泳ぎさすらう海へ



 男の子って女の子とは違う物質組成でできてるのね

 女の子は砂糖菓子でできていて、

 男の子はカタツムリのしっぽでできていると

 マザーグースにも書いてあった気がするわ



 どうして僕のことを好きになったのと

 いつか尋ねられたとき

 上手に答えられなかったけれど

 今ならうまく言えそうな気がする



 両腕を翼のようにひろげて

 「この腕の中があなたの宇宙よ」ってささやいてあげる

 あなたを抱きしめあなたを閉じこめもう離さないわ

 悲しかったことも苦しかったことも全部聞いてあげる

 嬉しかったことも楽しかったことも全部聞いてあげる

 あなたはからっぽになって私もからっぽになって

 そこには丸いどこまでも遠い青空と

 どこまでも深い土の密度



 いつしか私は

 深まりいく秋の温度で燃え上がり

 この地上のどこにもいなくなるの

 細い指先も冷たい足先も

 長い髪も白い肌も

 すべてが

 炎となって

 ある朝 湖の中に消えるの



 その前にあなたを抱きしめなくちゃ

 もう二度と逢えなくなってしまうその前に



 両腕を翼のようにひろげて

 「この腕の中が小さな宇宙よ」ってささやいてみる

 あなたを力いっぱいこの腕に抱きしめると

 あなたはその瞬間から宇宙の王者になるのよ








¨・¨∵:*:∵¨・.*.・¨∵:*:∵¨・¨
20061010/22:42 最終連 推敲により加筆しました




*一昨日叔母が亡くなりました。
 急な訃報でしたが長く癌の再発に苦しんでいたようです。
 その昔、癌とは別の病で手術したとき、叔母は別離した
 かつての夫である叔父の名前をずっと手術の間中呼び続け
 ていたと(半身麻酔を希望したために意識が半分あったの
 です)それを聞いていて手術に立ち会っていた父が、とても
 やり切れなかった…と語っていたのをふと思い出し、無性に
 悲しくなりました。
 どんなに輝いていた命にも、どんなに固く誓い合った愛にも
 いつか終わりが来る。そう思うと愛を語る口調も少しだけ
 ペシミスティックになってしまいました。

 逢えなくなっても、決して忘れない。
 そう言い切るだけでは悲しすぎますね。人を亡くすことは。

 だからこそ、生きて出会えた大切な人とつながりあった絆を、
 この手のひらを離してはいけない…そう思っています。


 だから、私はもう一度誓います。
 もう何処にも行かないと。ずっとあなたのそばに居続けると。



 いつも、森が静かにそこに存在し続けるように。
 

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by forest_poem | 2006-10-10 12:13 | 詩 未分類
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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