朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

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即興長詩 未分類 「雨は降るのです」


    「雨は降るのです」



創世はかくのごときであったかと
思われるほどに降りしきる雨

雨は降るのです
空は泣くのです

木々は揺れるのです
梢はざわめくのです

草は濡れるのです
川は流れるのです

鳥たちは黙り返るのです
蛙たちは歌いさざめくのです

私は水平線の方角を見つめ
雨雲のそのさらに上には太陽があることを
信じようと思いながら
雨足の行方を見まもっております

美しい雨足なのであります
恋に戸惑う青年のように
迷いながらこの地に訪れ
しばし留まりこの地をうるおしつづけております
止むことのない雨として
美しく静かに強く降り続いていくのです
もしもこのままこの雨が降り続き
この地を湿地帯に変えてしまうのなら
それもよしとして運命のすべてを受け入れようと
もしそのときは
私は一匹の青い龍となって
天と水底とを往来しながら
この不思議な宿命を賛美しながら生きていこうと
そんな風に思えるのでした

創世はかくのごときであったかと
思われるほどに降りしきる雨

雨は降るのです
空は泣くのです

木々は揺れるのです
梢はざわめくのです

草は濡れるのです
川は流れるのです

鳥たちは黙り返るのです
魚たちは祈りざわめくのです

私は水平線の方角を見つめ
海のその底にはいまだ誰も知らぬ龍の住処があって
この美しい雨を呼び寄せながら
ごうごうと鳴り響く大地のリズムを海のアルペジオを
まるで透明で壮大な竪琴を奏でるように
時には流されて心を休めろと
時にはあらがい強く生きろと
運命にはかくのごときに身をゆだねろと
そんな声がしたかのように思えたのは
恋人からの短い手紙を読み終えたあとで
私の心にオレンジ色の灯火が点ったせいばかりでは
ないのではないかと

それにしても降り続く雨だなと
止むのを待たずに今日は眠ろうかと
恋人にはどんな手紙を書こうかと
思いながら寝所に身を横たえて
ただ小さな胎児のように
まるくなって
窓を叩く
雨の音を
聴いていたのです



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【補足&解説】
推敲の課程で創生を創世に書き換えました。
地球のはじまりは、核融合がおさまって、ゆるやかに冷えていきながら長い長い雨が降り続き、海だけが最初に存在したといいます。
様々な地上に残されている各民族の創世神話にもこの世のはじまりは、長い雨だったというものや、海から国がはじまったというようなものがいくつかあります。古事記、日本書紀のイザナキ、イザナミによる国生み伝説や、ノアの箱船などのように。


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by forest_poem | 2006-10-03 08:32 | 詩 未分類
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創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
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