朋田菜花の「ときには森を抜ける風の音のように」

forest2006.exblog.jp ブログトップ

即興長詩 未分類 「海に降る雪」



  「海に降る雪」


 君の言いたいことはよくわかるんだ
 アニメのフィギュアとデートはできないし
 何枚J-POPのレコード掛けても
 素敵すぎる歌詞は君自身の恋の行方など答えてはくれない
 ネットのテキストに現れた愛の言葉は
 その瞬間甘くて酸っぱくても
 次の瞬間アップルタイザーの泡のように消えていく
 そんな風に感じてしまえる君の戸惑いの言葉だって
 今受け取った私が明日忘れてしまえば
 南極海に降り注いで海に溶けていく雪のように
 もうどこにもなかったかのように消えていく

 そう思いこんでしまえば簡単かもしれないね
 そう思いこんでしまえばお気楽かもしれない

 私が今何を考えていた教えてあげようか
 ずっと海に降る雪について考えていたんだよ
 まだ秋が始まったばかりだというのに
 心の海原に白い雪が降り始めたんだ

 海に降る雪を眺めて、
  アザラシは温かい岩陰をさがそうと歩き始め
 海に降る雪を眺めて、
  イワトビペンギンの雛は母の足元にもぐり込み
 海に降る雪を眺めて、
  クジラたちはゆるやかに愛のブルースを歌い
 海に降る雪を眺めて、
  漁師は魚達がプランクトンを食べて太るのを想像し
 海に降る雪を眺めて、
  老婆は孫達に贈る靴下を編み始め
 海に降る雪を眺めて、
  都会の子ども達は深々とコートの襟を立て
 海に降る雪を眺めて、
  私は君の冷え切った頬をそっと暖めたいと願う

 この地上で出来事の答えなんて一つじゃないんだ
 君の未来も私の未来も
 誰のキャッシュメモリにも保存されてない

 真っ白な雪原にソリを走らせていくみたいに
 轍(わだち)はこれから刻まれていくんだ

 ただ一つ信じられることは
 あの青い嵐の夜 
 送電線が火花を吹く暴風に怯えながら
 ただ暗闇の中で震えていた私に届いた励ましのメールは
 ただのデジタルな信号などではなく
 君の体温のように暖かかったってこと
 姿は見えなくても、私の冷え切った手のひらを
 握りしめてくれている君のぬくもりを感じていた

 たぶんこれから私は海に降る雪を眺めたら
 きっと君のことを思うだろう 
 海に降る雪を眺めたら
 その冷たい君の頬に私の頬をくっつけて
 昨日見た映画の話をしながら明日食べたいケーキの話しや
 一昨日見かけた変わった羽根の色の鳥の話や
 書きかけのイラストの話や
 君を主人公にしたコメディの話をするだろう 

 海に降る雪を眺めたら
  きっと君の幸せを願うだろう 
 海に降る雪を眺めたら
  いつか自分自身も雪のように海原に溶けて
 海に降る雪を眺めたら
  いつか自分自身も空から降り注いでみたいと思うだろう

 もしもいつか君が私のことを忘れたら
 この私の冷たさも暖かさも思い出さなくなった頃
 私は雪のように君の肩の上に降り注いで
 生きていたときの記憶を一瞬輝かせるだろう

 君に出会えてどんなに幸福だったかを
 儚く溶けていきながら
 その耳元に囁くだろう







20060924 少し加筆修正しました
[PR]
by forest_poem | 2006-09-24 08:25 | 詩 未分類
line

創作モード炸裂。ファンタージュの森を生く。


by forest_poem
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30