漂泊の森NO.005 「バビロンの聖人」
2013年 08月 22日
アーティスト:Hemstock and Jennings 曲:Babylon
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「バビロンの聖人」 詩 朋田菜花
よく切れる刃は、よくこぼれやすい
尖って生きるということはそういうことだ
ただ自らの剣を研ぐ作法を心得よ
こぼれたら鍛え、またこぼれたらまた鍛えるのだ
たゆまぬ手入れ、たゆまぬ鍛錬
それは千の名刀にも千の護衛にも勝る
バビロンの聖人は 静かに語り終えると
紫煙とともに砂漠のかなたへと姿を消した
父の大学の卒業寄せ書き手帳を子供時代に読ませてもらいました。すると、とある先生から卒業の祝辞の結びに 「よく切れる刃物はこぼれやすい」 というコメントが寄せられて書かれていました。子供心に、え~~これってお祝いのコメントの結びとしてどうなんだろう? と不思議に思ったものでした。まだその時は小学3年生の少女でしたので^^
いま、大人になって考えると才気煥発ゆえに、あちらこちらに頭をぶつけたり、衝突することもあるかもしれないから、その辺によく気を配るようにね‥という意味合いをたったの一行で表現したとても深い人生訓だったようです。さすが大学の先生となると、すばらしい言葉を駆使なさるのですねぇ。
もっとも、その心配は父には無用で、才能がありすぎるのにそれをなにか自分の得することに役立てようとするところがまったくない人でしたので人と争ったり衝突したりする様子はまったくなかったです。
騙されることはあっても、ひとを騙すようなことはまったくなかったし、陥れられることがあっても、陥れるようなことはあり得ませんでした。
落とし穴に落とされても、これはいったいどういう趣向だろう‥と、笑いながら頭をかきかき穴から出てきそうです^^
なんか、そういう才能はともかく、性格はそっくり受け継いでしまったようです。
いいんです。もう。何度も騙されて泣きましたしその分、自分に呆れて笑いもしました^^
ただ、神様はよくしたもので、私に人よりすぐれた五感をくれました。
たとえば人がじっくり長いあいだ本や手紙を読むと、紙がその人のにおいを吸い込んでしまうのです。
その紙のにおいをかいだだけで、その人がその書類を読んでいる間何を考えていたかわかってしまったりします。苦しかったり、切なかったり‥なにに悩みつつ読んだのかもおおよそわかってしまったりしました。
それらをすべて抱きしめこの胸に受け留めいつくしむ‥それもまた私の使命なのだと思っています。そこからまた、あらたな言葉群を紡ぐのが、想いを届けてくれた人への返信なのかもしれません。
亡くなった祖父が、文字の書かれたものにはすべて命が宿っているので、粗末に扱うと神様から罰を受けるのだといって、ノートや教科書を机以外の場所に置いたり、ましてや踏み越えたりまたいだりすることを決して許さなかったのを思い出しました。これからも、言葉ひとつひとつ、そしてそこに書かれなかったこぼれおちた言葉ひとつひとつさえ大切にして生きていきます。
バビロンの聖人は少し、祖父に似ていたかもしれません^^
by forest_poem
| 2013-08-22 20:56
| 漂泊の森_短詩綴り